公的保障の会・第1回社会保障連続講座2011(2011年9月18日)
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税と社会保障の一体改革は何をもたらすか?
ー 社 会 保 障 の 理 念 の 再 構 築 を ー
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佛教大学社会福祉学部教授
里 見 賢 治
Ⅰ.「社会保障・税一体改革成案」に至る経緯と構造
*菅直人内閣発足(2010年6月)
「強い経済、強い財政、強い社会保障」を標榜→「財政運営戦略」(10.6.22)
↓ ペイアズユーゴー原則
*「政府・与党社会保障改革検討本部」設置(2010.10.28~)
↓
*その下に、「社会保障改革に関する有識者会議」設置(2010.11.5)
「社会保障改革に関する有識者会議報告~安心と活力への社会保障ビジョン~」
(2010.12.8)
↓
*第2回検討本部「社会保障改革の推進について」(2010.12.10)決定
→閣議決定(2010.12.14)
↓
*第3回検討本部、「社会保障改革に関する集中検討会議」の設置を決定(2011.1.21)
↓
*集中検討会議、第1回(2011.25)~第10回(2011.6.2)
第6回集中検討会議に、厚生労働省案「社会保障制度改革の方向性と具体策ー「世代間公平」と「共助」を柱とする持続可能性の高い社会保障制度-」提出
第10回集中検討会議、「社会保障改革案」をとりまとめ(2011.6.2)
↓
*第5回検討本部(2011.6.3)、「成案決定会合」を設置→第1回(2011.6.8)~第5回(11.6.30)
↓
*第6回検討本部(2011.6.30)、「社会保障・税一体改革成案」を決定。
同日「社会保障・税番号大綱(案)」も決定
↓
*閣議に「社会保障・税一体改革成案」を報告(2011.7.1)
*民主党社会保障と税の抜本改革調査会「中間整理」(ポイント)
(2010.12.6→同12.10第2回検討本部に提出)
*民主党社会保障と税の抜本改革調査会「『あるべき社会保障』の実現に向けて」
(2011.5.26→第9回集中検討会議(11.5.30)に提出)
*政府・与党社会保障改革検討本部決定「社会保障・税一体改革成案」の目次
はじめに
Ⅰ 社会保障改革の全体像
1 社会保障改革の基本的考え方~「中規模・高機能な社会保障」の実現をめざして
2 改革の優先順位と個別分野における具体的改革の方向
(1) 改革の優先順位
(2) 個別分野における具体的改革
<個別分野における主な改革項目(充実/重点化・効率化)
Ⅰ 子ども・子育て
Ⅱ 医療・介護等
Ⅲ 年金
Ⅳ 就労促進
Ⅴ Ⅰ~Ⅳ以外の充実、重点・効率化
Ⅵ 地方単独事業
[再掲] 貧困・格差対策~重層的なセーフティネットの構築
(3) 社会保障・税に関わる共通番号制度の早期導入
Ⅱ 社会保障費用の推計
1 機能強化(充実と重点化・効率化の同時実施)にかかる費用
2 社会保障給付にかかる公(国・地方)全体の推計
Ⅲ 社会保障・税一体改革の基本的姿
1 社会保障の安定財源確保の基本的枠組み
(1) 消費税収を主たる財源とする社会保障安定財源の確保
(2) 消費税収の使途の明確化
(3) 国・地方を通じた社会保障給付の安定財源の確保
(4) 消費税率の段階的引き上げ
2 社会保障の安定財源確保と財政健全化の同時達成
Ⅳ 税制全体の抜本改革
(1) 個人所得課税
(2) 法人課税
(3) 消費課税
(4) 資産課税
(5) 地方税制
(6) その他
Ⅴ 社会保障・税一体改革のスケジュール
Ⅵ デフレ脱却への取組、経済成長との好循環の実現
別紙1「社会保障改革の推進について」(平成22年12月14日閣議決定)
別紙2「社会保障改革の具体策、工程及び費用試算」
別紙3「社会保障の安定財源確保の基本的枠組み」
Ⅰ.「社会保障・税一体改革成案」は何を目指しているか?
1.社会保障は「公助」(公的責任)ではない? ; 社会保障概念の特異な転換と概念崩し
→ 「共助=社会保険」、「公助=救貧的制度、公的扶助・社会福祉等」?
参照;・『平成20年版厚生労働白書』「社会保障の基本的考え方」p.6~7
・厚生労働省案「社会保障制度改革の方向性と具体策 ー 「世代間公平」と 「共助」を柱とする持続可能性の高い社会保障制度 ー 」(2011年5月12日)
2.社会保障抜本改革は失敗、マイナーな範囲にとどまる→わずかな改善を理由に、
消費税5%増税に落とし込む役割
詳しくは後述
Ⅱ.「社会保障・税一体改革成案」の社会保障改革とは何か?
1.「成案」のいう社会保障改革
①子ども・子育て
*少子化社会対策会議(内閣総理大臣を会長とし、関係閣僚で構成)
2010年6月29日「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」
2011年7月29日「子ども・子育て新システムに関する中間とりまとめ」
「子ども・子育て新システム検討会議」(関係閣僚で構成)の作業グループの下の「基本制度ワーキングチーム」が7月27日にまとめたもの
*「子ども・子育て支援給付(仮称)」
・子ども手当(個人への現金給付)→2011.8.4民自公3党幹事長会議合意で廃止
・こども園給付(仮称)
・地域型保育給(仮称)
*「子ども・子育て支援事業(仮称)」
・地域子育て支援事業
・延長保育事業、病児・病後保育事業
・放課後児童クラブ
・妊婦健診
*幼保一体化
*2015年所要額(公費)=0.7兆円
②医療・介護等
*自公政権以来の課題の列挙
*高額療養費の見直しと受診時定額負担制度の同時実施(検討)
*利用者負担総合合算制度の新設の検討
*後期高齢者医療制度の廃止の先送り
*2015年所要額(公費)=最大1.6兆円弱(総合合算制度、最大0.4兆円程度を含む)
③年金~年金制度抜本改革は後退、現行制度の修正に重点移行
*「一体改革成案」 ; 「年金」
○国民的な合意に向けた議論や環境整備を進め、「新しい年金制度の創設」実現に取り組む。
・所得比例年金(社会保険方式)、最低保障年金(税財源)
○年金改革の目指すべき方向性に沿って、現行制度の改善を図る。
・最低保障機能の強化+高所得者の年金給付の見直し
・短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大、第3号被保険者制度の見直し、在職老齢年金の見直し、産休期間中の保険料負担免除、被用者年金の一元化
・マクロ経済スライド、支給開始年齢の引上げ、標準報酬上限の引上げなどの検討
○ 業務運営の効率化を図る(業務運営及びシステムの改善)。
*2015年所要額(公費)
・「新しい年金制度の創設」・・・・・試算なし
・現行制度の改善;2015年所要額(公費)=最大0.6兆円程度
④就労促進
*「若者の安定的雇用の確保、女性の就業率のM字カーブの解消、年齢にかかわりなく働き続けることができる社会づくり、障害者の雇用促進」(8頁)
*「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を図る」(同)
*2015年所要額(公費) ; 試算なし
⑤成案の社会保障改革のマイナーさ
2.社会保障を口実とする消費税増税の既定事実化
①「成案」の消費税引き上げのロジック
・「社会保障給付の規模に見合った安定財源の確保に向け、まずは、2010年代半ばまでに段階的に消費税率(国・地上)を10%まで引き上げ、当面の社会保障改革にかかる安定財源を確保する」。→社会保障改革に要する財源(公費)=2.7兆円
・消費税収を主たる財源とする社会保障安定財源の確保 → 将来的には消費税で社会保障財源を賄う!? → 社会保障のあり方の根本的変更
・消費税収を「社会保障四経費」(年金・医療・介護・少子化対策)に充当
・消費税収の使途の明確化(社会保障目的財源化)
②「消費税を社会保障財源にする」≠「社会保障財源を消費税で賄う」
3.社会保障改革の財源試算(2015年度)
・差し引き所要財源=約2.7兆円(うち年金制度改革で必要な財源は約0.6兆円)
・充実による額 3.8 兆円程度
・重点化・効率化による額 ~▲1.2 兆円程度
・消費税5%引き上げによる税収増=13.5兆円
・内訳 ;・消費税引上げに伴う社会保障支出等の増 1%相当
・機能強化 3%相当
・制度改革に伴う増 1%
・高齢化等に伴う増 1%
・年金2分の1(安定財源) 1%
・機能維持 1%相当
Ⅲ.「成案」の社会保障財源政策~消費税増税は果たして妥当か?
1.なぜ「社会保障と税の一体改革」なのか?
*財政危機は、社会保障に責任がある?
↓
*社会保障を口実にして、増税の合意形成を図る?
*財源が重要≠「社会保障・税一体改革」
2.社会保障の拡充に財源を要することは事実
・日本の税・社会保障負担率の低さ(先進国中最低) → 先進国平均水準に引き 上げの可能性あり
↓
・日本の社会保障水準の低さ → 税・社会保障負担率引き上げの必要あり
↓
・日本の相対的貧困率の高さの連動
3.企業や国民各層の負担の公平に配慮した財源選択が必要
・何故消費税増税しかないかの風潮がまかり通るのか?
・社会保障の高齢3経費を、消費税で賄うことは、いつ、どこで決まったか?
→ どこでも決まっていない!
4.社会保障財源政策の基準=目的適合性
・社会保障の目的に適合的な財源が選択されるべき
5.消費税増税は妥当か?
①素朴な疑問
*なぜ、消費税ならさらに負担は可能で、所得税なら不可能なのか?
②「消費税のメリット」は本当か?
*「消費税の税収安定性」とは何か?
*「消費税は広く薄い負担」か?
*「公平な負担の消費税」は本当か?
*「消費税はクロヨン問題を緩和する」か?
*「消費税は世代間不公平を改善する」か?
*「所得課税強化は、超高額所得者の国外逃避を促進する」か?
*「法人課税強化は、企業の国外逃避を促進する」か?
*「ヨーロッパでは消費課税が常識」をどう考えるか?
6.直接税中心の財源政策は可能
Ⅳ.社会保障概念の特異な変更~社会保障の市場化への道
1.自助・共助・公助の概念とその転換
①自助・共助・公助に関する従来の定義
②自助・共助・公助の概念の転換の軌跡
*社会保障制度審議会・1995年勧告「社会保障体制の再構築に関する勧告~安心して暮らせる21世紀の社会を目指して~」
*社会保障の在り方に関する懇談会報告「今後の社会保障の在り方について」(2006年5月26日、座長・宮島洋)
*『平成20年版 厚生労働白書』(2008年)
2.社会保障概念・定義の重大な変更とその意味
*社会保障は公的責任(=公助)ではない?
↓
*社会保障の大部分は共助(=社会保険)?
↓
*社会保障の財源は、主として消費税で~?
3.社会保障の定義の特異な変更を是認する「社会保障・税一体改革成案」
おわりに~社会保障の理念の再構築を~
(参考文献)
①里見賢治『新年金宣言 ー 基礎年金を公費負担方式へ』山吹書店、2008年
②里見賢治『改訂新版 現代社会保障論 ー 皆保障体制をめざして』高菅出版、2010年
③里見賢治「社会福祉再編期における社会福祉パラダイム ー 普遍主義・選別主義の概念を中心に ー 」(日本社会福祉学会50周年記念出版、阿部志郎他編『講座 戦後社会福祉の総括と21世紀への展望 Ⅱ.思想と理論』ドメス出版、2002年)
④里見賢治・二木立・伊東敬文『公的介護保険に異議あり ー もう一つの提案』ミネルヴァ書房、1996年、改訂版1997年
⑤里見賢治「社会保険方式の再検討」社会政策学会『高齢社会と社会政策』(社会政策学会誌第2号、ミネルヴァ書房、1999年)
⑥里見賢治「民主党中心政権の福祉政策・期待と危うさ ー 新自由主義路線をリセットできるか?(連載・福祉政策の焦点4)」『賃金と社会保障』2009年10月下旬号
⑦里見賢治「介護保険の10年と2011年改定の動向(連載・福祉政策の焦点5)」『賃金と社会保障』2011年4月下旬号